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2022年4月、成年年齢が20歳から18歳に引下げられます

平成30(2018)年、第196回国会において、民法の一部を改正する法律(平成30年法律第59号、以下「改正法」とします。)が成立し、同年6月20日に公布されました。これにより、民法第4条で規定している「成年」の年齢は、20歳から18歳に変更されることとなりました。

この変更の施行日は、令和4(2022)年4月1日となります(改正法附則第1条本文)。

この日は、2002年4月2日から2004年4月1日生まれの方も、一斉に成年となります(改正法附則第2条第2項)。

成年になることにより、親の同意なく契約の当事者となることができ、反面、親の同意のない契約などを取り消すことができる、いわゆる「未成年者取消権」も行使できなくなります。

※改正法​施行日前に18歳以上20歳未満(未成年者)だった際に行った契約など法律行為の取消は、未成年者がした行為として扱われるため、改正法施行日以後でも「未成年者取消権」の対象と考えられるとする。(笹井・木村編著『一問一答 成年年齢引下げ』70p)

​このページでは、この変更に伴う、主な注意点について紹介したいと考えます。

■2022年4月1日以降、未成年者とは

「成年」年齢の意味するところが、20歳でなく18歳となることから、「未成年」の定義も、特に法律で定めてない限り、18歳未満に変わることになります。

たとえば、行政書士の場合、未成年者を欠格事由(行政書士法第2条の2第1号)としていますが、改正法施行後は、18歳未満が「未成年者」となることから、18歳に達した者は行政書士になることができることになります。

※未成年者を欠格事由とする条項の例としては、公認会計士(公認会計士法第4条第1号)、税理士(税理士法第4条第1号)、弁理士(弁理士法第8条第9号)、司法書士(司法書士法第5条第2号)、社会保険労務士(社会保険労務士法第5条第1号)などにあります。一方、弁護士の場合はありません。また、免許付与の欠格事由として未成年者を排除しているものとしては、医師(医師法第3条)、歯科医師(歯科医師法第3条)、薬剤師(薬剤師法第4条)などがある。

なお、少年法における「少年」の定義については、令和3年4月21日現在、第204回国会において審議中の改正法案が成立した場合も、現行の20歳未満のままとなる見通しです。また、18歳以上の少年は特定少年と定義されます(少年法等の一部を改正する法律案第1条関係)。

■年齢制限などが現状維持となるケース

今回の改正法では、「成年」年齢の変更後も、引き続き制限する年齢を20歳未満とし、現状を維持したものがあります。これらは、令和4年4月1日以降は、未成年者だからではなく、20歳未満の者であるので禁止あるいは制限されることとなります。

例)飲酒、喫煙、公営競技(競馬・自転車競技・小型自動車競走・モーターボート競走)の勝馬投票券等の購入・譲り受け

養子縁組の場合

​養子縁組についても、養子をする(養親になる)ことができる者が、「成年に達した者」から「20歳に達した者」と改正されました(民法第792条関係)。

つまり、養子縁組の養親年齢規定については、実質的に変更がありません(現状維持)。

※普通養子の場合、養親になれる年齢は改正法により20歳以上。特別養子の場合、養親になれる年齢は25才以上(特別養子縁組は、養親の夫婦共同縁組が原則だが、夫婦の一方が25歳以上であれば、他方は20歳以上で可)。(民法第792条、第817条の4)

(参考)

 従来、普通養子の場合、養親が「成年に達した者」としていたため、未成年者の婚姻による成年擬制者(つまり、20歳未満の者)が養親となる事例があり、戸籍実務は、成年擬制者も「成年に達した者」として扱ってきた(昭和23年10月23日民事甲第1994号民事局長回答)とされる。しかし、改正法では、養親を「20歳に達した者」と明定したため、経過措置による成年擬制者も含め、改正法施行日以後は、20歳未満の者は養親になることができない。

■結婚できる年齢は男女共通へ

婚姻適齢(結婚できる年齢)は、男女とも、18歳以上と改正されます。

従来は、男18歳以上、女16歳以上(民法第731条)となっており、未成年者の婚姻でも、再婚は別として、父母の同意を要件に可能(民法第737条)としていますが、今後は、下記の経過措置の場合を除いて、未成年者が婚姻する制度そのものが無くなります。

〔経過措置1〕​2022年4月1日時点で16歳以上の女性は、引き続き未成年のうちでも結婚できる。

 改正法施行の日(2022年4月1日)に16歳以上18歳未満の女性は、改正法による18歳成年に達しなくても(未成年でも)、従来どおり父母の同意を要件に婚姻することができ、従来どおり婚姻によって成年に達したものとみなされます(父母の同意、成年擬制、改正法附則第3条第2項、改正前民法第737条、第753条)。

 この規定の対象者は、2004年4月2日から2006年4月1日生まれの女性となります。こうした経過措置を設ける理由としては、従来の制度を前提に結婚を考えている人を救済するという考え方だろうと思われます。

(参考)人口動態調査によると、直近2017(平成29)年における16歳と17歳の婚姻数は1,044(16歳247、17歳797)で、女性の婚姻総数に占める割合は、0.1720%とのことである。(笹井・木村編著『一問一答 成年年齢引下げ』50-51p)

 とすると、この措置を活用する事例は、それほど多くないのではないかとも思われるのだが、改正法は、16歳からの2歳引上げによる不利益を考えて、こうした救済措置を設けている。

〔経過措置2〕改正法施行前に未成年で結婚した人の扱い​

改正法施行の日前に未成年で婚姻した人も、改正前の法律により、婚姻の時に成年に達したものとみなされます(改正法附則第2条第3項、改正前第753条)。

■国籍関係の手続の変更点

改正法では、国籍法の関係規定も改正(改正法附則第12条、第13条)されました。次の太字の項目が、20歳から18歳に引き下げられます。

・認知された子の国籍取得(国籍法第3条第1項)
 認知された子の簡易な国籍取得手続については、従来より、20歳未満の認知された子で、認知をした父または母が子の出生時点で日本国民であり、その後も現に日本国民である場合または死亡時に日本国民であった場合、認知された子は、法務大臣への届出により、日本国籍を取得できます。

 この規定も、「20歳未満」から「18歳未満」に改正されました(改正法附則第12条、国籍法第2条第1項)。

・帰化の要件(国籍法第5条第1項第2号)

 外国人が日本に帰化する要件のひとつに「20歳以上で本国法によつて行為能力を有する者」という規定があります。

 今回の改正法(2022年4月1日施行)では、この要件が「18歳以上」と改正されました(改正法附則第12条、国籍法第5条第1項第2号)。

・国籍の選択(国籍法第14条第1項)

 重国籍状態の解消を目的とするものですが、外国人で日本国籍を取得した時点が、従来、20歳未満の場合は22歳までに、20歳以上の場合は2年以内に、いずれかの国籍を選択することとなっています。

 改正法によって、18歳未満の者は20歳までに、18歳以上の者は2年以内に選択することとなります(改正法附則第12条、国籍法第14条第1項)。

 〔経過措置〕

 なお、改正法施行の日(2022年4月1日)に、重国籍で20歳以上の方には改正法は適用されず、従来通りとなります(改正法附則第13条第2項)。つまり、重国籍状態になった時点が、20歳未満の場合は22歳までに、20歳以上の場合は2年以内に国籍選択することになります。

 また、改正法施行の日(2022年4月1日)に、18歳以上20歳未満の方は、施行の日に重国籍状態になったとみなされますので、2022年4月1日から2年以内に国籍選択をすることになります。

・国籍の再取得の要件(国籍法第17条第1項)

 外国で出生し、出生によって外国籍を取得した日本国民が、日本国籍を留保する意思表示をしなかったため、出生時にさかのぼって日本国籍を失った場合(国籍法第12条の場合)に、法務大臣への届出によって国籍を再取得できる簡易な手続ですが、この簡易手続により再取得できる要件は、「20歳未満のもので、日本に住所を有すること」とされています。

 改正法では、この要件規定も「18歳未満」と改正されました(改正法附則第12条、国籍法第17条第1項)。

 〔経過措置〕

 なお、改正法施行の際、国籍法第12条により日本国籍を失った方で、16歳以上の方については、改正法施行の日(2022年4月1日)から2年間猶予期間が与えられ、改正前の旧法が適用されます(改正法附則第13条第4項)。つまり、従来の「20歳未満で日本に住所を有する」要件を充たせば、届出により国籍の再取得ができるよう救済されます。

■その他の主な変更点

その他、「18歳」と改正される主なものは次のとおりです。

・登録水先人養成施設等の講師の資格(改正法附則第11条、水先法第15条第1項第2号イ、第30条第1項第2号イ)

・社会福祉主事の資格(改正法附則第14条、社会福祉法第19条第1項)

・船舶職員及び小型船舶操縦者法による登録海技免許講習実施機関等の講師の資格に関する諸規定(改正法附則第15条第1号、船舶職員及び小型船舶操縦者法別表第一から別表第五)

・10年有効の一般旅券の取得ができる年齢(改正法附則第15条第2号、旅券法第5条第1項第2号)

・登録電子通信移行講習実施機関の講師の資格(改正法附則第15条第3号、船舶安全法及び船舶職員法の一部を改正する法律別表の下欄第1号)

・性同一性障害者であって、性別変更の審判を家庭裁判所に請求できる年齢(改正法附則第15条第4号、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第3条第1項第1号)

​参考文献・参考資料

笹井・木村編著(2019)『一問一答 成年年齢引下げ』(商事法務)

民法(成年年齢改正関係Q&A)http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00238.html 法務省HP

民法の一部を改正する法律(成年年齢改正関係)について 法務省HP

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